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なぜ日本人男性は「分裂的な言動」をしてしまうのか?―母系制の影響を読み解く

母系制と日本人男性の言葉―組織や社会に与える影響とは

カウンセリング理論としての考察

 テクノロジーと心の健康:現代日本社会への視点

近年、パソコンやスマートフォン、デジタルデバイスなどのテクノロジーは、人々のコミュニケーション方法や考え方に大きな影響を及ぼしています。その影響の中で、日本社会特有の家族構造や言葉の使い方が、心の健康や行動にどう関わっているのかをカウンセリング理論の視点で整理します。

 

吉本隆明「共同幻想論」と母系制の心理的影響

吉本隆明による「共同幻想論」は、国家や社会といった大きな集団が個人にどのような影響を与えるのかを扱い、「黙契」や「禁制」といった集団内で共有される無意識的なルールや規範の内面化を解説しました。

 

黙契・禁制のカウンセリング的解釈黙契…社会の規範や慣習を無意識的に模倣・適合し続ける行動パターン。本来の思考や感情を十分に認識・表現できず、行動だけが繰り返される現象とみなせます。

 

禁制…ある種の思考・感情・欲求が無意識的に抑圧されることで、自分自身の“本当の気持ち”や“考え”にアプローチしにくくなる心理的な状態。

 

このような現象は、家族システム論や多世代間伝達理論でも注目されており、家族内で伝承されるコミュニケーション様式や役割分担が、個人の心理的自立や感情表出に影響することが強調されています。

 

母系制と日本人のコミュニケーション

日本社会における「母系制」とは、母親を中心とした家族内コミュニケーションや価値観・規範の伝達様式を指すと考えられます。この枠組み内では、子どもが親や集団の期待に同調し、自分の思考や感情よりも行動や“空気”を重視しがちです。

カウンセリング理論との接点

家族システム論の枠組みでは、特定の問題や症状は個人のみに帰せられるものではなく、家族や集団のコミュニケーションや役割分担が影響していると考えます。

 

日本文化特有のハイ・コンテクストなコミュニケーション(言葉の裏を読む、察する)や、内面より行動・外形的一致を重視する傾向が、自己開示や本音の表現の難しさをもたらす要因と指摘されています。

 

テクノロジーによる増幅作用

現代のテクノロジーは、自己表現やコミュニケーションの敷居を下げる一方で、形式的・即物的なやりとりや、思考・感情の“空疎さ”を助長する危険性も指摘できます。本来の自己や感情の表現よりも、表面的な適応や情報処理が強調されやすく、これが「言葉」と「行動」の不一致――カウンセリングでいうところの「自己一致性の欠如」や「分裂的な状態」を助長することにつながります。

 

カウンセリングアプローチの提案

自己一致性(ロジャーズ):自分の感じていること・考えていることと、外に出す言葉や行動が乖離しない状態を目指す。

 

家族との相互作用の再考:個人の“問題”を家族全体のコミュニケーションや役割分担、感情表現のあり方と関連付けて捉える。

 

自己開示とエンパシーの促進:テクノロジーで表面的になりがちな関係性を、深い自己開示と共感のやりとりによって補完する。

 

文化的背景への配慮:日本人の文化的・社会的土壌に由来するコミュニケーション習慣や価値観を理解し、個としての主体形成を支援する。

 

まとめ

本来、心の健康や発達には「自己一致性」「本音の表現」そして「家族や集団とのバランスのとれたコミュニケーション」が重要です。現代テクノロジーにより表面的なやりとりが加速するなかで、内面的な気づきや感情の調整を促進するカウンセリングの意義はますます高まっています。「母系制」や「共同幻想」といった社会的規定を正しく理解し直し、個人の成長と社会的適応の調和をサポートするアプローチが求められています。