True Colors

草原へ駆けて――はかせちゃんと少女たちの午後

 

ワンスアポンアタイム,ちょっと前に、心がちょっと繊細で、色とりどりのものとお人形が大好きな男の子、葉加瀬君が住んでいました。

 

ある日、葉加瀬君の家では、ママの妹のウエディング記念写真を囲み、女友達の大学教授・神原尚子や家族と和やかな午後が過ぎていました。でも、写真の妹夫婦にはどうやら波風が立ち始めているらしく、みんなで「離婚するの?もう?早っ。」なんて話題でも盛り上がるのでした。

 

「ところで葉加瀬君はどこ?」と尋ねる神原教授。博士君のママが写真のなかの、花かごを持ったピンクのひらひらドレスの少女を指して「あっ、これなの」と答えます。「会ってみたい、私待つわ!」なんてユーモラスなやりとりが交わされる中、部屋のドアが開いて博士君が帰宅。「このリュックに付いてるのは何?」と聞く神原教授に、「これは人形作家のおばさまにいただいた僕のお人形です」と答える博士君。

 

神原教授はほほえみながら言いました、「ピンクが好き ドレスが好き お人形が好き すなわち、葉加瀬君は心が少女なんだね」。けれど葉加瀬君は「はっ?違います。僕は、ぼくは、えーと」と困り顔。

 

そのとき、スマートフォンが鳴り、親友の的場知世からのコール。

「僕、研究材料にされちゃいそうです」と葉加瀬君がささやくと、

電話の向こうで「なんですってぇ!?はかせちゃんがピンチだよう!」と叫ぶ知世。

 

「いろんな色が好きな男の子ではだめですか?」

「駄目よ!そういうのはもう古いし、大学教授の私が寄り添う価値もない」と神原教授はちょっと強気。

「教授。僕は箱の中に詰められることは嫌です。僕はこの外の野原で遊んでおります。そもそも僕は教授が思われているほど甘くもありません」ときっぱり告げる葉加瀬君。

 

その時、バンッ!とドアが開き、「はかせちゃん、助けに来たよ!さっさと逃げよう」と的場知世が登場。

二人は手を取り合い、家の外の輝く草原へと駆け出します。

自分でドアを開け、空の下、好きな色も好きな服も好きなまま、二人は笑いながら野原を走っていくのでした。

 

そして、葉加瀬君は気づくのです。「本当のぼくは、みんなが思うほど簡単な箱には詰まらない」。

草原の風が、自由な心をそっと後押しします――。

 

おしまい。