『ドグラ・マグラ』は、探偵小説家夢野久作の代表作とされる小説で、構想・執筆に10年以上の歳月をかけて、1935年に刊行された。小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、中井英夫『虚無への供物』と並んで、日本探偵小説三大奇書に数えられている。
第1章:謎めいた真崎博士
天才的だが物議を醸す精神科医・正木博士が、東京の医学会議で画期的な「胎児の夢」理論を発表する。彼は胎児が祖先の記憶を体験し、無意識の闇や殺意を含む心理的特徴を母体から継承すると熱弁をふるう。聴衆は興味を示す者と懐疑的な者で二分される。ライバル精神科医・若林博士が正木博士の主張に公然と異議を唱え、物語全体に響き渡る専門的な対立構造が生まれる。