さあ、我が実の娘メーテルよ。
母親であるわたくしペルセポネーに乞いなさい。
泣き叫びながら、地を叩きながら、乞いなさい。
“愛するママ、私に笑顔で話しかけてください。
私に怒りをぶつけないでください。
拳を振るわないでください。
爪を立てないでください。
汚れた子だと遠ざけないでください。
『あっちへ行け』と責め苛むことも、どうかしないでください。
ただ涙の底から、声を震わせ、懇願してみせなさい。――それが、冥府の女王の娘に与えられる唯一の光なのだから。
母である私こそ冥府の規律。
娘のあなたには絶対に抗えぬ力なのです。
主な内容のご案内
日本語・女性の脳を変えるメリット 実践実技・日本語講座「Crown White(クラウンホワイト)王国物語」では、二人の魅力的な人物が登場します。
一人はパーソナリティ・シンボルであるクラウンホワイト(Crown White/王冠の白ウサギ)。もう一人は、ギリシャ神話の冥府の女王ペルセポネー。
けれども、実際はこの二人は同一人物です。
――表の顔である王冠の白ウサギと、裏の顔である冥府の女王ペルセポネーが、時計の針が回るごとに交互に現れ、物語は進行します。
このKINDLE BOOKは、時計の針の向きに従って、ふたりの――つまり一人の――キャラクターが交互に語る、入れ子構造のトリックストーリーとなっています。
クラウンホワイト(Crown White/王冠の白ウサギ)はこう訓辞を垂れた。彼の口調は、あたかも杉下右京のようである。
「アマゾンのキンドルを通じ、全世界へ飛び出したわたくしは、王冠の白ウサギ――“クラウンホワイト”と呼ばれております。至極光栄な呼称でございますね。
私めは、坂口由美氏が主宰されるNPO全日本カウンセラー協会のシンボルキャラクターにて、同協会で“指示性カウンセリング”を学習されている“マスターカウンセラー様”の分身でもございます。
以後、お見知りおきを頂きますれば幸いに存じます。」
「さて、“分身”とは一体何を意味するのでしょうか?
実はリチャード・バンドラー氏が提唱した“神経言語プログラミング(NLP)”において、イメージ療法の一つとして“脳内に分身を作り、その分身と対話する”という手法がございます。
わたくしクラウンホワイト――王冠の白ウサギは、まさしくその分身の一つに他なりません。
すなわち、あなた様、“マスターカウンセラー”の分身なのでございますねえ。
ところで、あなた様は紅茶はお好きでしょうか?
わたくし、実のところ紅茶には目がございませんでして。
えぇ、こうして丁寧にお入れした一杯の紅茶――いかがでしょう。
気が向きましたら、ぜひご一緒に。
これはなかなか、奥深い味わいなのですよ。」
「そうね、香しい紅茶を一杯所望するわ。ちょうど喉が渇いていたところよ。察しがいいわね――その機微を心得ている者こそ、冥界に仕える資格があるものよ。
さあ、聞きなさい。
私こそ、ギリシャ神話の冥府の女王ペルセポネー。
アマゾンのキンドルを通じ、全世界へ告げるわ。
『母親の喋る日本語こそが、娘を呪い、囲い込み、幽閉する牢獄である』と――これを知らぬ者は、いつまでも闇に迷い続けるがいいわ。」
冥府の女王ペルセポネーが、尊大な口ぶりで戦闘を開始する。
「ふふ……滑稽にもほどがあるわね、クラウンホワイト。
神経言語プログラミング?イメージ療法?
自分自身を救い上げる?阿呆の戯言にすぎないわ。
その欺瞞、偽りの仮面――今この冥界で、私がすべて暴き立ててみせる。
さあ、戦の幕を開けましょう。
冥府の扉は今、女王ペルセポネーの一声で――開かれる!」
尊大かつ挑発的な調子で、ペルセポネーが圧倒的な主導権を握り、戦闘・心理的な対決の始まりを宣言した。
冥府の女王ペルセポネーが尊大にクラウンホワイトを挑発し、バンドラーのイメージ療法の「目くらまし」に切り込んだ。
「では聞こう、クラウンホワイト。貴様が信じるというリチャード・バンドラーの“イメージ療法”とやら――
この冥府の深淵において、一体どんな“幻想”で、己の愚かさから目を背けさせるつもりなのか?
まさか、ちっぽけな自己像をすげ替え、目くらましの幻影で魂をごまかすつもりかえ?
哀れなウサギよ――その薄っぺらな救済のイメージ、
このペルセポネーが一撃で引き裂いてやろう!」
冥界の主としての威厳・挑発・矛盾の指摘・戦いへの誘導を盛り込んだ高慢な口ぶりであった。
クラウンホワイトが彼特有の悪い癖である丁寧かつねちねちした口調で分身の目的を説明し始めた。
「なぜ分身を作り出すのか……これは、実に良いご質問ですねえ。さすがは冥府の女王ペルセポネー様、お見事としか申し上げようがございません。
さて、その目的でございますが……もし、あなた様、もしくは“マスターカウンセラー”の方が、現在、誰かとの人間関係で行き詰まりを感じておいでだとしましょう。
この際、私――王冠の白ウサギ、クラウンホワイトが、“分身”としてお役に立つわけでございます。
どうするのかと申しますと、あなた様の意識とともに時空を遡り、過去、辛くて悲しかった“始まり”の場面までご一緒に逆戻りいたします。
そこで、その時のあなた様――つまり“過去のご自身”に、分身としての私が対話を試みるのでございます。
しかも、けっして一人きりにはいたしません。必ずご同伴いたします。
その上で、あなた様と共に、じっくりと問題の根元・本質に向き合い、解決に取り組んでいく――というわけで……どうでしょう、少々ねちねちしておりますが、これが私クラウンホワイト流の“分身イメージ療法”なのでございますよ。」
ほう・・・さも馬鹿にしたように、揶揄した口調で、冥府の女王ペルセポネーは、確認した。
「すると、分身のおまえが、今、NPO全日本カウンセラー協会のバーチャルサロンで、現在の、現実のマスターカウンセラーの脳内イメージを退行化させて、はるか昔の過去へ逆戻りしていき、家では母親から言葉の虐待を浴びて、家の外では、仲間外れにされて虐められている、ひとりぼっちの哀れで惨めなマスターカウンセラーがオイオイ泣いている、ぽろぽろ涙をこぼしている、悔しさに唇をかみしめている弱虫の実態やいくじなし振りを、わざわざ思い出させて、そこに王冠の白ウサギが高い空から舞い降りるというこっけいなピエロのような立ち回りを演じて見せる、という趣向だな?そして、優しい笑顔で、たぶらかそうという魂胆だな?見え透いてはいるが、ううむ、どのように話し掛けるのか?申してみよ。」
・・・冥府の女王ペルセポネーが揶揄し挑発する中、クラウンホワイト(王冠の白ウサギ)は時空を超えて、脳内の過去の記憶の領域に現れ、優しい笑顔で「弱虫・いくじなし」な過去のマスターカウンセラーに語りかける。
「おやおや……なんとも惨めで哀れなお姿ですねえ。
お家では母親の言葉の暴力に晒され、外では仲間にも遠ざけられて、ひとりぼっち――つらいものですねぇ。
あなた様は、過去のご自身に向かって、どうしても泣きたかったのでしょう?悔しさに唇をかみしめる、その姿を、私はしっかり見届けに参りました。
……さて、私クラウンホワイトは高い空から舞い降りるピエロ――にも見えるでしょうが、ただ、ここで一つ申し上げておきたいのです。
あなた様は決して一人ではない、ということなのですよ。
過去の痛み・悔しさ――そのすべてを、どうか隠すことなく、存分に涙を流していただいて結構です。
私が今こうして、お傍(そば)におりますので、心の奥底から、どうぞお話しください。
あなた様が涙にくれるときも、弱虫・いくじなしだと自分を責めるときも――私クラウンホワイトは、必ず味方としてあなた様を見守っております。
ですから……どうぞ、遠慮なく、今の気持ちをお聴かせくださいませんか?」
「メーテルさま、ごきげんよう。
貴女さまは、冥府の女王ペルセポネーさまのご息女でいらっしゃいます。
そして、不肖ながら私めは、その分身たる“クラウンホワイト”――王冠の白ウサギでございます。
さてさて、メーテルさま。
もしよろしければ、お尋ねしてもよろしいでしょうか?
何が悲しくて、そんなにも心を痛めておられるのでしょうか。
悲しみの理由というものは、時に複雑に絡み合い、なかなか一言で申し上げるのは難しいかと存じますが……。
過去の記憶や出来事、或いは胸の内に秘めたる想いが、今の“お辛さ”と深く繋がっているのかもしれませんねぇ。
もし差し支えなければ、どうぞご遠慮なく、お心のうちをお話しくださいますと、私クラウンホワイトとしては、誠に光栄でございますし、何かお力添えができるかもしれません。
お辛いお気持ちに、そっと寄り添わせていただく所存でございますので――どうぞ、ご安心くださいませ。」
メーテルは悲しみに満ちた若い未婚の女性です。王冠の白ウサギという分身を生み出しました。彼女の話し方には独特な癖があり、ため息混じりに少し投げやりで諦観めいた柔らかさが漂う。小さいころ父親が家を出て帰らず、母親は無言の人になってしまいました。そのせいで自分について母親に話せず、何が良くて何が悪いのかわからないまま友達に嫌われ、女の子グループから理解不能な理由で悪口を言われるのです。女の子たちはお団子のように固まってヒステリックに罵り、後からいたずら好きな男の子も大声で怒鳴り始めます。その環境の中で、孤独と戸惑いを抱えたメーテルの表情や醸し出す雰囲気には、繊細さと諦め、ほんのわずかな希望が混じっていました。
「あのね……やっぱり今日も、ひとりだったのよ。
家にいてもね、しーんと静かで、お母さん、相変わらずなーんにも話してくれなくってさ。
なんか、心のなかにずーっと冷たい風が吹いてる感じ、わかる? ……ねぇ、わかる?
それでね、学校に行っても、やっぱり私、どこにも居場所がなくて。
みんな、お団子みたいに集まってさ、ひそひそ、がやがや。
……あーあ、私、やっぱり馴染めないんだなぁ――なんて、思っちゃったりして。
何が悪かったのかなぁ? ううん、別に誰かに酷いことした覚えも、なんか失礼なこと言った覚えも、ぜーんぜん、ないんだけど。
みんなの笑い声が遠くから聞こえるたび、どうしてこんなに胸が締めつけられるんだろうって、ねぇ、私の白ウサギさん。
ほら、あなたはおしゃべりしてくれるじゃない。
私のこと、バカだなあって呆れて笑ってるかもしれないけどさ……。
でも、ほんと、毎日寒くって寒くって。
朝も夜も、独り言しか話し相手いないなんてね、じつに情けない話だよねぇ。
――あーあ、もう、何もかも投げ出して、どこか遠くに行っちゃいたい気分。
でもさ、行く場所なんて、どこにもないんだよ。困ったねぇ……
ほんと、誰かに“そっか、辛かったね”って、たった一言だけでいいから言ってもらえたら……
それだけで、きっと、少しはあったかくなる気がするんだけどなぁ。
……ま、人生なんて、だいたい、そんなもんなのよね。ふふ。」
「メーテルさま。僭越ながら一つご提案を差し上げてもよろしゅうございますか?
お母様に――ええ、ご自身のお母様に、笑顔でお話し掛けてみてはいかがでしょうか、ということなのです。
ほら、お母様の怒ったお顔というものは、できれば見たくはないものですよねぇ。
できましたら、そう、お母様には微笑みを浮かべていただいて、その微笑みで、メーテルさま、お顔とお目もとをやさしく見てさしあげてほしいなぁと、私は密かに願うのでございます。
お母様がそうしてくださると、不思議なものですねぇ、
メーテルさまの心が、どこか晴れやかな気持ちになり、
ああ、自分って少し元気かもしれないな、という感覚が芽生えてくる……そんな気がしてならないわけです。
どうでしょう、今夜はひとつ、心を込めて、“お母様、笑顔で話しかけてくださいませんか?”と、お願いしてみては。
……ええ、きっと、それだけで、何かが少し変わっていく、
……そんなことも、きっとあるのではと、私クラウンホワイトは、思うのでございますよ。」
「……ああ、そうねぇ。なんだか、今ならお母様に今日あったこと、少しぐらい話してみてもいいかなって……そんな気がしてきたわ。
うん、なんだか心がね、ちょっとだけだけど……晴れ晴れしてきたの。
……ふふ、珍しいわねぇ、あたしがこうして明るい気持ちになれるなんて。
白うさぎさん、あなたが言ってくれたからよ。
いつもそばにいてくれて、見上げるだけで、なんだかホッとする気がするの。
ありがとね、私の白うさぎさん……。
ふう、人生って、思ってたより少しだけ、悪くないのかもしれないわねぇ……。
……なんて、ね。ふふ……。」
クラウンホワイト(王冠の白ウサギ)が、冥府の女王ペルセポネーに説明を始めた。
「ペルセポネーさま、ご覧いただけましたか?
僭越ながらご報告させていただきますが――
脳内の過去の記憶領域におけるメーテルさまの気分やご気持ちが、ようやく立ち直り、元気を取り戻されましたので、
わたくし、“王冠の白ウサギ”たる分身は、時空を超え、過去の哀しみから一歩距離をおきまして、
本日無事に“現在”へと戻ることができました。
そして、今のメーテルさまの気分やお気持ちとも融和し、心の統合に至った次第でございます。
おかげさまで、この一連の“心の旅路”も、事故なく平穏裏に終了いたしました。
……以上、ご報告とさせていただきます。何卒、よろしくご査収くださいますよう、お願い申し上げます。」