『祓えないもの』 坂口 由美 (著)  形式: Kindle版


話体から文学体への転移

吉本隆明『言語にとって美とはなにか』(勁草書房)

『言語にとって美とはなにか』第一巻、ラストの「話体から文学体への転移」を理論的支柱にする、ということを、吉本の枠組みで言うと、これは自己表出(語る主体の内的な表出価値)と指示表出(外界を指し示す伝達価値)という二つの軸の話で、話し言葉=話体は指示表出優位(その場その場の状況に密着し、文脈依存的、伝達のための言葉)、それが文学体に転移するとき、自己表出の軸が密度を増し、構成(リズム・距離・統辞)が伝達性を超えて自律していく、という運動だったと理解することができます。すなわち「誰かに何かを伝えるための言葉」が、書かれることで「それ自体が構成された表出物」へと変質する、その転移の瞬間こそが文学の発生点である、と。